過食嘔吐は次の過食嘔吐を予約しているに過ぎない


過食嘔吐は次の過食嘔吐を予約しているに過ぎない」という一節をどこかで読んでいて、なんとなく「ああ確かに」と思っていたんだけど、
最近になって、この言葉の本質が腑に落ちたような気がしているので書き留めておきたい。






◇お腹がすく状態=血糖値の低下









人間の仕組みとして
「血糖値が下がる→何か血糖値をあげる行為をしなさい」という命令が出る。
そして、「血糖値を上げろ!」という命令が人間の意識として理解できるように転換されたのが「お腹が減るというサインがでる」というものがある、らしい。


これは意思の力なんか及ばない場所にある摂理だ。



血糖値が下がっていることを教えてくれるサインが「お腹がすく」という感覚らしい。
で、空腹って言うのは血糖値に依存しているのであって、決して、胃腸に食べ物があるかどうか?ではない。
これは認知症のおばあちゃんが食後すぐに「ご飯まだ!!!」とあばれることを見ればわかることで、どれだけ胃腸に食べ物が入っていたとしても、血糖値の上昇が身体と脳に伝わっていなければ、食べたことにはならないのである。










この摂理に沿って考えていくと見えてくるのは過食と血糖値との関係性。


太るのが嫌で食べないことを続けていればいつかは血糖値が人間として不適切な値にまで低下するときがくる。
そして、「血糖値があまりに下がりすぎる」→「意思の力の及ばないくらいに動物的な感覚で血糖値を上げる材料を食べる行為をさせる」
という式が成り立っていく。

この「動物的な過食衝動」というのは意思の力など及ばない動物としての生命の危機管理なのであって防ぐことは出来ないものだ。
(ただし、この動物としての部分を突き抜けて辿り着くのが拒食症なのだろう。そういえば拒食症の人たちは動物と言う生き物っぽい雰囲気が皆無のような気がする)



次にどうなるか。
「血糖値を支えるための動物的過食」を嫌悪して嘔吐するというのは、結局、「人間として適正な血糖値を得させない」ということになり、
「動物的過食衝動」が襲ってくるのを単なる先延ばしにしただけの、政治家的な手段で負債がどんどん増えていく行動なのだ。




つまり、「過食嘔吐をすればするほど、次の過食衝動を招く」ということだ。


いつかは、血糖値を適正にする(=動物的過食を受け入れる)のをやらなければならない。
それは概ね太ることを受け入れる、という覚悟の事をいうのかもしれない。






■食べ過ぎてしまうわけ
私達人類には数百万年もの長い間、
飢えと戦ってきたという歴史があります。

このため、血糖値を下げる仕組みはインスリンしかないのに対して
血糖値をあげるしくみは私たちの体内にたくさん備わっているのです。



その一つが、お腹がすく、ということです。
血糖値が下がると下がった血糖値をあげるために「何か食べろ!」という命令が脳から発せられます。
これが食欲であり「お腹がすいた」という感覚なのです。


もちろん低血糖症でない健康な人でも空腹は感じます。

しかし血糖値が限度を超えてさがってしまうと普通のお腹のすき方でなくて尋常ではないお腹のすき方になってしまうのです。


・いくら食べても満足できない
・目の前にある食べ物を全部食べきらないと気がすまない
・人によっては、太りたくないのでそこまでして食べたものを全部吐いてしまう



つまり、低血糖は「過剰な食欲」を引き起こし
「過食」を起こす原因にもなりうるのです。

特に、過食症の人は「お腹すいた」というスイッチが入ったら最後、
目の色が変わってしまい、食べることしか考えられなくなってしまいます。




低血糖から脳を守るために「食べろ!」という命令がかなり強力に発せられるからです。


■過食衝動に襲われる人は超低血糖


ふつうの人が毎日感じているような
「あーあ、お腹すいたぁ」という程度の空腹感ではなく
下がりすぎた血糖値を上げて「生存する」ための信号ですから、かなり強烈です。



普通の人の空腹を知らせる信号が
「昼食の時間を知らせる定時のチャイム」だとすると
過食症の人にとっての信号は「火事を知らせる非常用ベル」のようなものです。



低血糖という非常事態を乗り切るため
「食べて、食べて、食べまくれ!」という非常ベルが
脳の中でけたたましく鳴り響くわけです。


非常用のスイッチがオンになったときには
すでに自分で自分をコントロールすることができない状態になっているのです。



それまで我慢に我慢を重ねて、食べないようにしていたのに、このスイッチが入た途端、そんなことはどうでもよくなってしまいます。





目の前にある食べ物を手当たり次第にたべまくり、
ハッとわれに返ったときには
家の中の食べ物がなくなってしまっています。

そして、「ああ、やってしまった」と落ち込むのです。




これを繰り返しているため
多くの過食症の患者さんが
自分のことを「意志の弱い人間」だと思っています。



残念ながら、この強烈な食欲に逆らうのは、とても難しいことです。

私たちの生存本能が生き延びるために行っているので
自分の意志でどうこうしようというレベルをはるかに超えている、といってもいいでしょう。



これらの症状は全て脳とホルモンがおこなっていることであり、
けっして過食症患者の意思が弱いわけではないのです。
低血糖症がそうさせている、という理解が必要です。

また、過食症の患者さんには、過食したあとに嘔吐する人が多いです。
なぜ、吐くのかというと自分で食べることをコントロールできない以上、
太らないでいるためには吐くしか方法がないからです。



つまり、どうせ吐くのだから、食べたいものをいくら食べてもいいじゃない!
と考えるわけです。




そして、もちろん、そういうときに食べるのは
ふだん我慢しているあまいものや菓子パンなどです。








■吐いてもチャラにはできない

しかし残念ながらーーここはよく理解していただきたいのですがーー



吐いても食べてしまったものはチャラにはなりません。

吐いてしまえば食べてなかったのと同じ、ということにはならないのです。
ここにも血糖値が関係しています。

甘いものなどに多く含まれる単純な糖分は
とても吸収が早い。



とくに砂糖やブドウ糖果糖液糖などの二糖類・単糖類は吸収がとても早く、
口や胃の粘膜からも吸収されることが分かっています。


そういうものを食べたり飲んだりすると、
吸収が早いため
あっというまに血糖値が急上昇してしまいます。

つまり、あとで吐こうがなにをしようが
血糖値はあがってしまいます。



となると当然、上がった血糖値を下げようとして
インスリンが分泌されることになります。

インスリンはそう、「太らせるホルモン」です。


後で吐いても、チューイングをするだけでも、
甘いものをある程度口にすると、結局はインスリンが分泌されてしまうのです。


インスリンは血糖値が上がると、
糖を脂肪に蓄えることで血糖値を下げようとします。


吐いているのにちっとも痩せない
むしろ太る、というのは
このような理由によるものです。

そして、インスリンが出てしまったにも関わらず吐いてしまうと、
体内に入ってくるはずの糖分が入ってこないために
インスリンが効きすぎてしまい、
血糖値がさらに下がってしまいます。

ということは、
過食して吐いたあとに、すぐにまたお腹がすいて、もっと食べたくなってしまうのです。

これではまるで
過食の蟻地獄のようではないでしょうか。




過食症を治すために栄養として


低血糖症を治す」というのが心理療法で改善が見込めなかった人の取り組むべき第一候補なのでは。


つまり、血糖値を安定させる。
そのためには何を食べるか?ということがとても重要です。

太りたくないからといって長い間満足に食べないで居ると、
低血糖を起こします。
そして、そのあと必ず過食になります。

そしてそのあと必ず過食になります。
低血糖を防ぐためには、チーズやヨーグルトなどの「血糖値を上げ難いもの」を「こまめに食べて」
いくことが必要です。



もちろん、病的な心理的要因が原因のひとつとしてある場合は、
それの治療も。

多くの過食症の患者さんは
ストレスにうまく対処することが得意ではないようです。
ストレスをうまく発散できない場合、過食をすることで発散しようとするのです。
経過が長い患者さんは
過食嘔吐がレジャー化してしまい、
逆に「しないと落ち着かない」という人も居る。

これは依存症と同じ。





低血糖症と精神疾患治療の手引―心身を損なう血糖やホルモンの異常等の栄養医学的治療

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