弱さを見せても大丈夫!誰も見捨てたりしないよ!!

私は、すべての病気に何かしら学べる要素があると思っています。

うつ病からは「休んでも大丈夫、人に頼っても大丈夫」ということが。
摂食障害からは「マイペースでも大丈夫、人に自分の気持ちを話しても大丈夫」

ということを学べる。
病気は確かに苦しいものですが、
病気にでもならない限り学べないことも確かにあるのです。

対人関係療法で治す社交不安障害  水島広子 創元社














◇弱みを見せたら排除される…という恐怖に打ち克つ



■痩せたいのは「自分」を保つため


摂食障害になる要素を持っている人は
人と人との間でストレスや不快感情を癒すことが出来ない。


自分への自信のなさや自己愛の強さゆえに、である。


その自分のいくらかをさらけ出して分かち合うという関わりが難しい。
ですから万能的に独力で内側に優越したいいものを持っている感覚に
自分を持っていこうとする。


そのときに、
自分の身体と精神を意図する方向に完璧にコントロールしていくことで
自分が卓越した優越した存在であると、
自分自身や周囲に示す行動を取り始めます。


この痩せは、決して異性をひきつけるためのものではない。
痩せることに没頭したら彼氏の存在に全く関心を持てなくなって別れた、という人がいた。
どう自分が痩せているかというそれだけに自分の気持ちが全て向いてしまったのでした。

そうした理想自己というものが具現化できるという万能的な感覚を
絶対的に痩せるという行為の達成において
この病の人たちは達成しようとするようです。








■気持ちを話さないのは損!


摂食障害になる人は一般的に
対人関係において自己主張することが苦手です。
一見、はっきりしているように見える人でも
肝心なことは何も行っていないことが多いのです。


肝心なことというのは
自分の気持ちです。


自己主張しないために周りの人に振り回されて
その中で生まれたネガティブな気持ちを
「モヤモヤ」したまま抱えます。



気持ちを話さないことで実際に起きるのは
皮肉なことに
摂食障害の人がもともと恐れていたこと。


まず「相手からどう思われているか」ということが
心配で自分の気持ちを言わないと
相手からは
「本音を言ってくれない、自分と親しくなることに関心がない」
「つまらない人」などいう目で見られることになり


必ずしもプラスの効果を生むわけではない。

人間関係は
相手に点数をつけるためでなく
したしくなって楽しむためのモン。
ですから、「完璧な人」よりも
「欠点も含めて人間味のある人」のほうが好かれるというのが
心を持った人間同士の付き合いなのです。









■学ぶべきことを終えたとき病も癒える


「自分はどこまでも努力できる」
「表面を取り繕わないと人は自分を嫌いになる」
というような思い込みに縛られた人生から
「自分が出来ることには限界がある」「本心を伝えたほうが人との絆が強まる」
という新たな認識を持った人生へと、変化するのです。


摂食障害を経験すると、それまで自分にも他人にも厳しかった人が
自分にも他人にも優しくなる、というのはよく見られる現象です。




自分の限界を認めるということは
他人の限界も認めるということです。
また、自分が本心を打ち明けていくと
相手も本心を打ち明けやすくなります。


症状との闘いの日々はその人にとって、
大きな転換期となります。


これはもちろん、人生を豊かにすることです。


たとえば「あらゆる人が苦しみを我慢して生きている」という考え方を
すりこまれている人がいます。
そういう人は、自分が苦しみを感じても
「こんなことくらい、他の人も我慢しているはず」と思って
状況をかえようともしないし、他人に苦しさを打ち明けようともしません。


苦しみを感じる自分そのものが
「人間として未熟だ」と思うからです。


もちろん、あらやる人が苦しみを我慢して生きているなどという事実はなく、
多くの人が、苦しみと喜びのバランスをとりながら、
あるいは、苦しみをうまくコントロールしながら
生きているわけです。


同じように、苦しみを体験しても、自分はその苦しみを
(他人の力を借りたりすることによって)コントロールできる、という自信があれば
食行動に過剰に頼らなくても、自分を支えていくこと、あるいは



ただただ苦しみに耐えていたら
やはり人間はどこかの時点で何かの精神疾患やガンなどの病気になると
思います。



他人の意見を聞いてみるという体験を初めてすることによって
自分の考え方が必ずしも唯一絶対の真理ではなかった、ということに
気づく人も少なくありません。


そんなときには、
「病気になったおかげで、こういう体験をすることができたのですね」と
言えるわけです。





■人間は弱点を持つ人間を排除しない!!


同じような思い込みとして
「本心を話したら、人は自分から離れていくだろう」というものがあります。

自分は人よりも努力していないと価値を認めてもらえない、
というようなものもあります。




こういう思い込みも、本心を話して人との親しさが増したり、
他人は表面的な価値よりも
人間的な価値を重視するのだと言う発見をしたりする中で
修正していくことが出来ます。



また、精神疾患になると、どれだけ努力しても、実勢が上がらなくなります。
「自分は人よりも努力していないと価値を認めてもらえない」と
思い込んでいるのに、それが事実上不可能になるのです。



こうなって初めて、人間の性質を知る事になります。
人は思ったよりも優しい存在だと言うことです。



「自分は人より努力していないと価値を認めてもらえない」という思い込みの
真偽を本当に確認するには、実際に努力できない状況に置かれるしかありません。
もちろん、つらい病気なのですが
見方を変えれば、自分の健康を蝕むパターンをストップさせる防御能力であると
考えることも出来ます。