「境界線みたいな身体が邪魔だね」←男には分からない




女性って、そんなに自分の身体が邪魔だと思っているのかな?

川上さんとか金原さんとかの小説には(主に生理のことだけど)「この思い通りにならない身体を捨ててしまいたい」みたいなことが書いてあった記憶があるし、
「この身体さえなければあなたの心にもっと近づけるのに」みたいな歌詞や少女マンガの作者は女性だ。







これは逆の意味として、「女性は身体を持っている」ということなんじゃないかと思っている。







■男性は自分の身体に注意を払わずに生きている



女性の方はびっくりされるかもしれませんが、男性は「俺には身体がある」ということを、日常的にあまり思っていません。
男性の方は「なんじゃその理論?」と思うかもしれませんが、女性はびっくりするぐらい「私は身体を持っている」ということを日常的に意識して生活しています。



このことは、摂食障害の発症が女性に多いことと関係しているんじゃないかと。
だって「痩せたい」という意味は「他人に見られている身体をスリムにしたい」っていうことで、「痩せた身体を持っている自分」が評価されると分かっているからである。


あとは、女性の方はびっくりするかもしれませんが、男性は生理がないので、基本的に体調が安定しています。
びっくりするぐらい、自分の身体に注意を払うことがありません。

それに、男性は社会から「能力」で評価されるので、「身体」については女性の皆様が自分の身体について気を配る(スタイル・生理への対処)ことはないのです。
(身体を鍛えるのは身体が評価されるのではなく、筋肉が増えたことによってお金を稼げる確率があがるということへの評価を得られると言う意味で、筋肉が増えたというみためについて男性は嬉しいわけではない)




だから、「身体が邪魔で、あなたの心と一つになれないのがもどかしい」というセリフを生み出せるのは女性だけなんじゃないかと思った。
「身体」が「無い」と感じているのであれば、「身体の分だけ君の心の距離がもどかしい」みたいな表現を男性がすることは、おそらくないんじゃないかと。







■女性性という概念

女性性というのが精神分析的に言うと表層的なものを意味しており、そこにいかなる「本質」もないとされます。
比喩的な言い方をすれば、それは女性が「身体」をもっているからです。


もう一度繰り返しますが、「女性性」は、いかなる「本質」もありません
(念のため断っておきますが、もちろんすべての「女性」個人は、「男性」個人と同様、なんらかの本質を持っています。ここで問題にされているのは、「女性性」なる概念です)


それは、女性の身体表面にのみ存在します。
つまり、女性は表層的な存在であるがゆえに、身体を持つことが出来るのです。




これに対して、男性は「身体」を持ちません。


男性にとって肉体とは空気のように透明な存在。



男性が自分の身体を持っていると思い出すのは激しい疲労や痛みといった「問題」が生じる場合だけ。
汗をかく快感というのは肉体を酷使することによって自らの身体性をなんとか確認したいからなのではないでしょうか。

(母は娘の人生を支配する 斉藤環 日本放送出版協会