季節を失った話


高校3年の秋に完全に過食嘔吐が発症して、それから、ずっと、僕の人生に暦はなくなった。




卒業の入学も、入社も。
誕生日もお正月もお盆もクリスマスも。

そして、成人式もなかった。
成人など迎えてはいけないと思った。


成人式の日は、コンビニでバーコードを読み取る1日だった。
中学生の時の同級生が振袖で缶コーヒーを買いに来た姿を見て、
「普通の世界のあっち側は、そういうふうに動いているのか。当たり前だよね」と
シニカルに構えたのを覚えている。


平日がなくなるって事は休日も無いって事。
普通の日を失ったら、特別な日も失うって事。

私が私を失ったということは、私があなたを失ったということ。




いつか春夏秋冬を取り戻す日は訪れるのだろうか。