身体は頭(欲望)の道具ですか??

◇身体(自分)を思い通りに出来ないのは許せない…



■自分を自分の思い通りにしようとすると…

自分のため」とダイエットや美容整形を始めたはずなのに、
実は「他人の視線」のためにそれを続け、
ついに「自分のため」でも「他人のため」でもなく暴走が始まるとき、
その人たちはいった、”誰のため”にそうしているのだろう。


美容整形とは異なるが
援助交際を行う女子学生たちもまた
「自分のからだは自分のものなのだから、自分の好きなように使ってもいいはず」と
思っている人たちだろう。



「意識さえ遠くに飛ばしてしまえば、あたしの心の中からは気持ち悪いとか
 いやだとかそういう感情は一切なくなる。
 時だけが過ぎていくだけだ。
 ふと気づけば行為は終わり、あたしはお金を握り締めている」


そうやって、”意識を飛ばして”さえしまえば、
あとは男が要求するままのことを何でもできる、と語る。
すべては”他人事”と決めてしまえば
後は自分の身体に起きているすべての事を
傍観者として眺めていけばいいのだ。


このように、自分の顔や身体に対して、
「私のものだから自由に変えたり使ったりしてよい」と
所有の権利を主張しすぎると、
いつしか身体は”誰のもの”でもなくなってしまうのではないか。

「自分は自分の傍観者」となってしまえば
あとは気分的には楽だろうが
暴走は止められなくなる。
そして気づいたときには
取り返しのつかないところまで
身体を改造したり、乱暴に扱ってしまうことに成るのではないか。


自分の顔や身体を好きになれない。
そう思っている人たちは
「他人には関係ない、私自身がそう感じるのだ」と思っているのかもしれないが
実はそうではない。
いつのまにか、自分は”他人のため”に生きているのだ。

(「悩み」の正体 香山リカ 岩波新書












■人間としての自分を否定する

みんなからかっこよく見られたい、きれいに見られたいという願望が
強すぎるからですか?




キレイだなんて思われていないのは本人も知ってるんです。
でも、本人の中で
「太るくらいだったら死んだほうがいい」
「太るくらいなら醜くてもいい」というのがあって、
本当に死んでしまう人も居る。
そうなると、人間はふつうの動物からなんと遠いところに
きてしまったのだろうって思います。
多くの人は、そこまでいったら本能で食べるんじゃないか?と思うんですが
その人たちは意志の力で食べまいとする。
ですから、自然の食欲にまかせてたべる、
眠くなったら寝るといような
生物として動物としての生き方がもうできない状態に私たちはなっている
自己実現を果たすため、目標達成のために本能を押さえ込む=コントロール願望)


だとすれば、
生きていくには食べなきゃとか働いて少しでも稼いで家を建てなくちゃという気持ちは、もうもてないですよ。




つまり、人間はもう動物であることを止めてしまう(ロボット、機械、操作可能な対象)
ようなところまできてしまった。
今の若者たちの中には動物としての欲求を放棄するような人も出てきている、と。

(ほどほどに豊かな社会 香山リカ 橘木俊あき ナカニシヤ出版)







■道具化した身体

「身体は大事」と口では言いながら、
実際には「身体に悪い」ことをしている例が少なくない。


「自分はこの身体とずっと付き合っていくのだ」という
身体に対する意識や感覚の変化が激しい。(その都度強迫があれば、常に求めら得る自分、評価される自分に”適応”するのは当然??)

だから若者たちは
あたかも神を色々な色に染めるのと同じように
簡単に整形をしたり、
半永久的に落ちないアートメイクを施したりする。

「いつか消せる技術もできるでしょ?」と言っている。
それくらいに変更可能な道具になっているのかもしれない。
身体はいつでも自分の欲求を叶えてくれる”道具”なのだ。

自分の身体に対する”とりあえず”の感覚は、ときとして彼らに不安や心もとなさを与えることも在る。
「自分の身体なのにロボットを操っているみたい」と、
精神医学で言う離人症のような訴えをする若者が目立つのも
身体との折り合いをどうつけていいのかわからない彼らの
戸惑いを現している。





それが行き過ぎると、
「これが自分の身体だ」という実感を取り戻すため、
過激な行動(自分や他人に対する暴力、食べ物を詰め込むだけ詰め込むなど)の暴発がおきてしまうこともある。







自分の身体は”とりあえず”のものではなくて、長く大切に付き合っていかなければならないものである。
今だけげんきになったり美しくなったりするのではなく、
20年後も健康で居られるよう、気をつけなければならないのだ。

(若者の法則 香山リカ 岩波新書











「悩み」の正体 (岩波新書)

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ほどほどに豊かな社会

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若者の法則 (岩波新書)

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