なぜ、「いい子」が摂食障害になりやすいのか



○E子さん(21歳・大学生)の場合





幼い頃から、
いつも周囲の人間の顔色をうかがって「いい子」を演じてきたE子さん。



◇「いい子」を演じてきたことへの反動



努力して人に認めてもらうことが、
彼女にとっては何よりも大切なことでした。



子どもの頃から、常に人間関係に敏感で、
両親がいつも不機嫌そうにしているのも、
自分が「悪い子」だからなんだと感じていました。
小学校高学年の頃に学校でいじめを受けたこともありましたが
「自分自身ですら大嫌いな自分なのだから、人からいじめをうけるのも当然だ」と思い、辛くても黙って飲み込んで、親に相談することもありませんでした。


そんな彼女は、自分のことを「価値のない人間」と思い、
「価値がない」からこそ
人一倍努力して眼に見える成果を挙げなければ、
自分は決して誰からも好かれないだろうし、
生きている資格すらないと思っていたのです。


そのため、
E子さんは何もしないで一日を過ごすというのは
悪いことのように思っていましたし、
「自分が楽しむために時間を使う」のは何より苦手でした。


E子さんにとっての時間とは、
常に「何かのためになる」「有意義」なものでなければならなかったのです。







◇なぜE子さんは摂食障害になったのかの分析




■自分を抑え続けていると反動で過食が



言葉も感情も「自己表現」の手段である。
小さいときから自分なりの表現を持っていれば
若者は心を病むことはない。
ところが往々にして言葉を持てない子がいる。
とくにマイナスの感情は
ささいな言葉、態度に敏感に反応するため、
それが抑圧されると身体に出たり、
衝動的な行動に出る。
(若者の心の病/森崇 高文研)






■いい子=感情を抑えられる??



いい子に育てたいと思ったら、
我慢強い子になって欲しいと普通思います。


ところがそれが大きな誤解なのです。


ふつう一般的に「我慢強い子」と言った場合、
感情を出さない子、つまり、すぐに泣いたり、
怒ったり、すねたりしない子をイメージしますよね。
そういう子の法が、良い子って評価されるわけですから。
でも、感情を育てるってことは、
感情を出さない子に育てることではないんです。


むしろ、ちゃんと
感情を出せる子に育てるのです。


(ちゃんと泣ける子に育てよう/ 大河原美以)




■自分を肯定してもらえずに育つと言うこと




摂食障害になる背景にはいろいろな問題があるのですが
「形」へのとらわれに関して特に注目しておきたいのは
「ありのままの姿で自分を肯定された経験が乏しい」ということです。
摂食障害になる人は
「いい子」が多いと言われていますが
それは、本人が「いい子」(周りに合わせる子、自己主張しない子)になりやすいタイプの子であったという
だけでなく
いい子でいなければならない事情もあった、ということが殆どです。

ありのままの自分を肯定してもらった経験のない場合に
「自分の価値が外見によって決まる」という思い込みを主症状とした
摂食障害社会不安障害になりやすい
水島広子/ダイエット依存症)









■親の不機嫌は自分が悪い子だからなんだ…



実は、子供は自分と他人との境界線があまりはっきりとしていません。
特に親との境目はあまりないのです。
基本的には、親の価値観の中で親の人間関係の中で生活しています。
親の精神的な不調や虐待が子供に大きな影響を与える理由の一つとして
「親が不幸なのは自分が悪いせいだ」という子ども特有の感じ方があります。
「親といえども、個人としての事情を抱えた1人の人間であり、その精神状態は自分と直接関係がない」という見方が
できていないので、
罪悪感を抱くことも多いし、親の気持ちを良くしようと報われない努力をしてしまう。




・顔色を読んであげないといけない親





親が「言わなくても自分の心を察して欲しい」というタイプの人だと
子どもは顔色を読むようになります。
また、親が感情的に怒るようなタイプの人でも
子どもはやはり親の顔色を読むようになります。


「自分が何をしたか」で叱られる子供は
自分の価値観と自尊心を育てることができますが
「親の機嫌がどうか」で叱られる子供は
相手の顔色を伺うようになります。



(10代の子をもつ親が知っておきたいこと 思春期の心と向き合う
 水島弘子 紀伊国屋書店




■基本的信頼感の欠如によって根底的な自己肯定感が低い。

幼少期から思ったことをパッと口に出せる、
のびのび出来る、喜怒哀楽の感情が出せる人たちの自尊心は高く、
社会不安、対人恐怖は低い。
だから、何もしていない自分には価値が無い
何かを達成できたことに対する一定の評価はするけれども、
達成できないと自分を認められない。
だから、常に達成し続けないといけない。
エネルギーがカラッポでも走り続けないといけない



■健全な問題との向き合い方を学習できない




過食症の家族のスタイルに共通して見られる特徴は
「葛藤を避ける」傾向。これは家族の間で何か問題が
もちあがったときに
それを当事者が直接解決しようとせず、
(問題に正しく向かい合う方法を学べない。迂回路を使うしかない。
 葛藤に対する取り組み方を学べない)




















◇考察



■親の未熟さを背負わされている

子どもの心の病気、特に10代に発症する心の病気は
親の未熟な生き方、生きづらい生き方を無意識に取り込んでしまった結果、
引き起こされているのだと思う。
そして、そうした未熟さの発散の受け皿として子どもが利用されてしまっている。
逆に考えると、子どもが心の病になることで、両親を家庭を支えている、ということだ。
だとするならば、もう、子どもを大人が解放してあげるしかない。
自由に、親とは別個の個体である人生に戻してあげること。
そのためには、親がもう一度、麻痺させている自分の感覚を呼び起こして
生きづらい生き方を是正していかなければならない。



悲しいけれど、子は親を見て育つ。
ダメな子はいないけど、だめな育て方、不十分な親は存在しているのだ。



だから、親が未熟な人間だと心の病が増えていくんじゃないですか!
で、犠牲者がどんどん無垢な子どもたちに増えていく!!!
もうこんな、言われない苦労を小さな背中に背負わせるのはやめませんか?


未熟な大人たちよ。
なんで、子どもなんて育てられると思ったんですか???